3 金木 正

武内さん、なんで早く連絡くれないんです?

僕待ってましたよ、ホントですよ約束したじゃないですか。

あれ?違ったかな、僕の勘違いだったらすみません。

正の奴はいつでもこれや。。

人の話聞く気はほとんどないのや。

自分が言いたい事をまず先に喋る。

唯一違うときがあるんや。

それは金儲けの話の時だけ。

コロッと変わりよるから笑えるが、油断ならんこいつは役者やねん。

しかも悪役専門のな。

相変わらず、女をソープにとか新しいオンラインカジノがどうとか喋り続けとる。。

しばらく適当にそうか、言うて。

声もやたらでかいんや、携帯を耳から放しておいたわそれでも十分聞こえるからな。

こいつは、相手が聞いてようが聞いていまいが関係あらへん。

そか、いう返事も不要なくらいなんや。

5分ほどたった頃やろか、正が武内さん聞いてますか?と聞こえたから。

やっとこっちの番や。

ほんま疲れる奴や。

いやこれから関東で銭儲けやねん。

そう言ったとたん、急にヘラヘラ口調から真剣な口調にガラリや。

そうなんですか、詳しく聞かせていただけませんかね?

僕もシノギがきつくて困ってるんですよ。。

しかし・・・こいつはほんま嘘吐きやな。

こっちかて少しは情報持ってるちゅーのにな。

わしの本業、探偵やで。

正が箱にパソコン設置して、オンラインカジノで荒稼ぎしてるのは随分前から知ってるんや。

人権費も、ほぼかからんし美味しいやろな。

金ある奴ほどないふりする事が多いんや。

わしの生きとる世界の奴は特にそうや。

なにもかも知ってるわしからしたら、苦笑いするしかあらへん。

正が、で桁はどれくらいですと来た。

桁いうのは額や、2か3やな言うたった。

1が百万や、あとは言わんでもわかるやろ?

億ですか!?

なんですそれ、さすが武内さんですね!

僕はずっとずっと前から、兄貴分になってもらいたいとずっと思ってましたよ。

間違いなく延び筋だと確信してましたから、ハイ!

こいつ・・・延び筋とかわし極道やないで。

ほんま頭痛くなるわ。

正はまだ喋り続けよる、もちろん僕のアガリも武内さんにバンバン上げますんで。

お願いしますよ。

僕にもそのヤマ踏ませてくださいよ。

これや、この言葉をわしは待っとった。

すかさず答えた、ええけどな。

今度はこっちがまくしたてる番や!

恭おるやろ、あいつわしが今預かっとるんや。

奴の借り帳消しならええで、言うたった。

数瞬の間をおいて。

一言、そうだったんですねと来た。

でもですね、恭の借り膨らんでまして200はあるんですよね。

こいつ、ほんまに腐れ外道や。。

てめえで薬覚えさしておいて、それで骨の髄までしゃぶるんやからな。

恭は元は正の闇カジノのディラーしとったんや。

負けりゃ、金が入らんシビアな世界でがんばっていたちゅうーのに。

言うな、わしかて無条件でとは言う気はないわ。

わかっとるやろ?難波博徒 武内家やで。

お前もそれでしのいでるんや、ひとつ勝負といかへんか?

正が口挟む間を与えずに言い切った。

ほお・・・。

面白そうですね、そりゃ。

わしにクソなすりつけた言うたら、正の株も上がるからな。

しかしこいつ、急にドスが聞いた声に変わりやがって。

奴もリスクはわかっとる。

どうでるか。。。

わしが煙草に火を点けようとした時。

答えが返ってきた。

わかりました。

もし武内さんが勝ったなら、恭とはもう他人です。

でも僕がもし勝ったら、恭の借りなんてどうでもいいですから。

代わりに、兄貴分になって頂けるならお受けしますよ。

そう来ると思っとったわ。

正に足らんもんは、金や女やあらへん。

金の亡者でド腐れのチンピラや思われてるところやねん。

ほんまもんの厄介者やから、どこの組も相手せんのや。

面子の世界やしな。

だからこそ、正はそれを一番に欲しがっとる。

わしはわかったと一言。

これできっちりと決まったわ。

正の声が聞こえる。

おい、今井。

宝生に電話しろ、え?じゃねえんだよ馬鹿野郎!

俺がしろっていったら、はいでいいんだよ!

ぶっこむぞコラ!

今井の、正さんすみませんという声が聞こえる。

正が戻ってきたわ。

それじゃ段取りはどういたしますか?

明日じゃ、わしかてはよ関東行かないかん。

お前も、ヤマふみたいんやろが?だったら即やろちがうか?

そう言うと、わかりました。

明日、こちらに着きましたらご連絡ください。

迎えに伺いますんで。

わしがほっと一息、煙草に火を点けると。

正の下卑た笑いがかすかに聞こえた。

最高の相手用意しますんで。

それでは失礼致します。

それで奴との電話は終わった。

ちらりと、恭を見ると。

妙に神妙な顔しとる。

なんやお前どうした?と聞くと。

宝生さんですか・・・

手強いですよ・・・

そんな事はわかっとるちゅーに、正が勝負かけてくるディラーやで、といい終わらぬうちに。

女なんですよ。

は?

わしも驚いて間抜けな声だしてもうた。

宝生理沙、弟さんがでかい借りつくってしまいまして。そのために正さんところで飼い殺しにされてる方です・・・

勝負する相手の情報は重要や、わしは恭に詳しく聞いた。

聞かん方がよかったわ。

後の祭りやけれど・・・

理沙いう女は、弟がさらに下手うったせいでソープにも沈められる言う事やった。

まだ沈められてはいないみたいや、けれどこの勝負で負けたら一生飼い殺しやろな・・・

やりにくくなったと同時に、正だけはきっちり型にはめたろうという複雑な感情がわしに渦巻いた。

けれどな、いい考えが浮かんだで。

わしは探偵や。

面白い事になるでこれは。

恭の心配そうな顔見ながら、言うたった安心せいや。

よしゃ!前祝や一杯行くで!

武内さん、まだ昼前ですよ。

なに言うてんのや、ここどこや?

西成やで、朝から一杯が粋な街やんけアホ 笑

恭も、そうっすねと笑った。

うん、いい笑顔や。

美味い酒になりそうや。



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