2 旅立ちの日

わしが関東に行くんはしっかりとした理由があるが。

今はまだ、それは話したくないんや。

ちょっと色気のある話や、銭だけの問題ちゃうで。

しかし驚いたわ。

昨日やけれど、酔っ払って恭に言うたんや。

お前、本気やったら頭まるめてこい。

その女みたいに長い髪うっとおしいねん。

今時流行らんぞ。

てな具合にな。

渋い顔しとったから、そんな程度の覚悟かいなと思ったんやが。

今朝迎えに来た恭は・・・

ボウズやったわ。

笑えるかと思っとったけれど。

なんちゅーか、シリアスなもんやな。

そういう覚悟は、冗談みたいな流れの話でも。

いきなり空気変えるからな。

不良とのやりとりにおいてもそうやで。

いくらヘラヘラしとっても、言葉一つでガラリや。

くそ、面倒なこと思い出したわ。

正や。。

あいつと話つけんことには。

関東にはいかれへんで。

恭に、お前ほんまに頭まるめてアホちゃうんか?言いながら

なんすかそれ・・・と苦笑いする奴の頭なでたった。

頭丸めて、どうこうなんぞ下らん話や。

けどな、お前の心は受け取った。

わしも難波博徒、いやひとりの男として。

きっちりそれに答えたる。

銭銭銭の、下衆ばかりの世界やけれど。

だからこそや。

わしが、わからしたるねん。

恭に電話貸せ言うた。

竹さん、どこへ?言うから。

正や、あいつとけじめつけるんじゃと。

恭は真剣な表情でわしの目を見て。

お願い致しますと頭下げたわ。

こいつもそこまでアホやない、自分じゃどうもならんことわかっとる。

遠まわしにゴチャ言う奴も多いけれど。

そこは違う、それだけがいいところやな。

一回目のコールで、すぐに電話は繋がった。

ありがとうございます!ヤマシロフードプランニングです。

若い男が電話に出た。

お忙しいところすんませんが、金木さんはいてますか?

金木言うのは正の事やで。

一瞬の間のあと、礼儀正しかったのが嘘やとわかったわ。

低い声で、しかしはっきりと。

誰だてめえ?と一言。

それからは黙ったままや。

こいつは正の商売ようしっとるようや。

だいたい、普通の会社がワンコで電話繋がるか?ちゅー話やな。

難波の武内言うてくれ、と答えると。

アナウンスに切り替わった。

若い女の声で、食事はバランスよく炭水化物とたんぱく質の・・・

五分ほどアナウンスを聞いたところで、さっきの男が電話にでた。

私は秘書の今井と申します。

先ほどは、大変失礼致しました申し訳ございません。

代表の懇意にされている方とは存じませんで。。

知らぬとはいえ云々・・・

ええから、はよ正につないでくれ言うと。

はいと一言。

いよいよや、金の木との対決や。

もう勝負は始まっとる。

わしか奴、どちらかの顔にクソがなすりつけられる。

後戻りできへん、やるしかない。

ほないくで。



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